「勝手」は我が侭勝手の勝手ではなく、家計を預かる所、やりくりする所のことで、昔は勝手口という玄関とは別の入口があったりしたが、最近は治安上の理由から開かずの扉にしてしまったり、あえて設けなくなっている。台所が何故勝手なのかは、かてかし実は極めて暖昧模糊としているのだが、糧を炊ぐ場所であるからというのが真相に近い。「糧」が「勝手」になったというもので、勝手であるから、あくまでも炊事空間であり、食事をする空間は別に設けた。勝手口の外には勝手庭という実用的な用途に使われるスペースがあり、「サザエさん」に登場するご用聞きが出入りするだけのものではなかった。炊事・調理空間は、締麗に泥を落とした食材を購入してくればいい現代とは異なり、まずは泥落とし、時には蕎麦打ちのように加工作業を伴ったり、竃での煮炊きなど実にさまざまな行為をする空間であるから、それなりのしつらえをしなければならなかったわけである。食う、寝る、排池する。これ、人間の基本的な生理現象だ。食う=ダイニングキッチン、寝る=ベッドルーム、排池する=トイレと相場は決まっているのだが、トイレはどうも濡れ衣を着せられているように思う。不当に扱われているのではないか。しかし、難問に直面した時、トイレほどくつろぎ、安らぎ、問題解決に手を貸してくれた空間は、ない。だから先人は便所とネーミングした。